いろは丸の水中調査

いろは丸は瀬戸内海備後灘の東端、走島町宇治島の沖、
水深二七ｍの海底に沈没しています。

昭和六三年(一九八八年)に「いろは丸」とみられる
沈没船が発見され、その後、京都の水中考古学研究所により、
平成元年(一九八九年)から翌二年の間に都合三次にわたって
水中考古学調査が実施されました。

深い水深とか劣悪な透明度などさまざまな困難を乗り越え、
これらの調査では海底に埋没した鉄製の船体を確認し、
燃料の石炭や滑車、陶磁器類などが引き揚げられています。
そして、船体の規模や構造、遺物の年代などから、
この船は幕末史を飾る著名な船であり歴史的価値が
高いと判断され、広島県および福山市によって
「沈没船(１９世紀のイギリス船)埋没地点遺跡」として
正式に遺跡登録がなされました。
また、第三次調査から一五年を経た、平成一七年(二〇〇五年)夏、
第四次の調査が実施されています。
沈没船はこれまでの調査で、上部を削られているものの、
船体は海底にほぼ水平な状態で埋没していることがわかっており、
船体前半部の状況が明らかになっています。

ボイラー室から後方へ調査すると、その部分からは板材や木片が
引き揚げられており、それらは積荷である箱や桶(樽)とみられ、
また舶来品のワインボトルの破片なども見つかっています。

また、この当時の船は、船尾に船長室や高級船員の船室が
置かれることが多いとされており、
周辺からはイギリスの地名が刻印されたドアノブやフック、
留め金具など、精巧で洒落た造りの真鍮製品が多く引き揚げられ、
多くは船室の内装品と考えられています。